彼女のボディガードを始めてから既に3年が経過した。最初の1年はよかったのだが、後半2年は僕的にかなり辛い状態になってしまった。ちょっと身体に変動を期してしまったせいで、完璧なボディガードとしての役割を果たせずにいるからだ。とはいっても、夜遅くまでバイトをしている彼女を夜道ひとりで帰らせる訳にはいかない。繁華街も危ないけど、彼女の住んでいる住宅街もかなり危険なニオイがするんだ。表現するなら、街の危険はキラキラでバカプーな危険、住宅街は、シャキーンじめじめドヨーンザラザラ~ドロドロドロって感じだ。つまり、住宅街は変質的ってコトだよ。彼女は凄い速足で帰るから、街でうろついているお兄さん達にそう声を掛けられる事もないんだけど、問題はその後を着けてくる奴さ。尾行して住宅街まで行ったところで声をかけて来るんだ。2人組ならまだマシな方。1人でやるヤツはイカレテルから気をつけなくちゃかなりヤバイ。でも、今の僕には彼女を守り切る力が無いんだ。それでも毎日、彼女がバイトを終わるのを待って送り届けている。どんなに力が無くたっていないよりはマシだろう?それに彼女も僕が居るだけで少しは安心してくれているみたいなんだ。2年前は頼り切っていてくれたけど、今の頼りない僕でも少しは心の支えになっているみたいだね。でも、僕にはちょっとした欠点があるんだ。あんまり言いたくはないんだけどさ、僕は無類の犬嫌いであると同時に、無類の猫嫌いなんだ。嫌いと云うと聞こえが良いかもしれないが、僕の場合は、その、奴らに恐怖を感じる程の重症。奴らのニオイを嗅いだだけで、全身の毛が逆立ちそうになるんだよ、実際なるし。彼女のバイトはカフェのキッチンスタッフさ。いつも帰りに髪の毛のニオイを気にしているんだ。でも、少し引っ込み思案な所があるからホールに出るのは嫌なんだってさ。笑顔がメチャメチャ可愛いからホールに出られたら、男の客に声を掛けられそうで心配だから、揚げ物で髪が臭くなったって僕はキッチンの方が安心なんだ。
月に吠えた夜(1)
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